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本能寺
1582年3月11日、武田胜頼が嫡男?信胜と共に天目山で自害し、戦国最强と名高い甲斐の武田氏が灭亡した。
指挥を执ったのは信长嫡男の信忠であり、光秀は何程の事もなく、ただ平安以来の源氏の名门が灭び去る様を见届けるだけでよかった。
镇守府将军?源満仲の嫡男?源頼光を祖とするのが、美浓源氏土岐氏。
三男の源頼信を祖とするのが甲斐源氏武田氏である。
同じ源氏の末裔として、桓武平氏に连なると自称する信长によって武田氏が灭ぼされるのを见るのは、複雑な思いもした。
だが、それもまた戦国の习いである。
そんな折、光秀が阵を构える寺にその男はやってきた。
五摂家笔头、近卫家の17代目当主。
関白、左大臣、太政大臣を歴任し、准三宫に任じられた男。
武力を持たない公家の身でありながら、この戦国乱世を自在に泳ぎ回り、あらゆる大事件に顔を出す鵺の如き男である。
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その名を、近卫前久。
信长に敌対し、信长包囲网の构筑に一役买ったかと思えば、甲斐府中まで同道して武田氏灭亡を见届けたりもする表裏比兴の男。
神出鬼没、何を考えているかもわからない、とにかく容易でない相手である。
人払いをした上で、寺の离れで近卫前久と向き合った光秀は、彼の话を闻き、目の前が真っ暗になるのを覚えた。
「―――今、なんと………」
早钟を打つ鼓动を抑えながら、喘ぐ様にして声を上げる。
近卫前久は扇を动かして、胸元にゆるゆると风を送りつつ、じっと光秀を见据える。
千年もの间、この国に涡巻く阴谋の涡中に在り続けた一族の末裔らしく、その眼差しからは何の感情も読み取れなかった。
「信长を讨て」
缲り返された言叶に、眩晕がしてくる。
事もあろうに、织田军の阵中、その只中である。
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人払いをしているとはいえ、どこで谁が闻き耳を立てていてもおかしくないのだ。
「そ、それは、しかし………」
顔面を苍白にしながら、言叶を探す。
だが、何も见つからなかった。
そんな光秀に対し、前久はさらに追い打ちをかけてくる。
「これは主上の思し召しにおじゃる」
「っ………」
血の気が引くとは、まさにこの事。
いずれ、このような时が来るのではないかとは薄々感じてはいた。
元より、この国にも几多の権力者が生まれてきた。
その元で、天皇家が傀儡に甘んじる事も、ままあった。
だが、天皇家に“成り代わろう”とした途端、不思议なことに、これまでその者に向かっていた时流の风は、ぴたっと反転する。
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