「ええ。あんまり时间を取らせるわけにもいかないしね」
返事では平静を取り缮いながらも、内心では强く浮き足立つ。しかしまぁ、女の子の家にお邪魔になるというシチュエーションもさることながら、その対象があの笹岭さんとあらば浮くのも立つのも致し方ない。主に俺の足は悪くない。
「お、そういう话なら俺はパスだな。笹岭さんが分からない所を俺が分かるわけねーし」
そしてこういう时のこいつは理解が早くて助かるというか、本当に気が利く。尤も、このにやついてる面は癪でしかないが。さらに十中八九明日の昼メシ代は俺持ちになる訳だが。
「ふふ、ごめんね。彼のこと、ちょっと借りるね」
「いーっていーって」
亲友は笹岭さんにそう言うと、俺に目配せをして。音を出さずに、唇の动きだけで、(顽张ってこいよ)と。そう告げる。
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(さんきゅ。明日色々返す)
(おう、いっちょ毎度あり)
それに対し、俺もまた唇の动きだけで応える。そんなやりとりをしている间に、五限の予铃が鸣るのだった。
??
「お邪魔します......」
「お构いなくー」
放课后。
校门から出て、自転车を漕ぐこと20分。さも普通な玄関を一歩跨ぐ。瞬间。
ふわり。
甘やかで柔らかな香りに身体を包まれるような感覚。笹岭さんにお近づきになった时にほのかに感じるのと似たそれが、俺の鼻腔と理性をひっきりなしにくすぐろうとしてくる。
それがいわゆる『気になっている女の子の家补正』......つまりプラシーボに近いあれなそれのおかげなのか、それとも何か他の要因によるものなのか、俺が図りかねている时。
「どう? いい匂いとかしない? アロマ、焚いてるんだけど」
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「アロマ?」
「ええ。リラックスできて、いつもより集中できるようになるの。今日は元々君を呼ぶつもりだったから、あらかじめ焚いておきました」
ああ、よかった。いくら俺が健全男子学生であったとしても、女の子の家补正に嗅覚を支配されていたとしたら中々にやべーやつだ。
......それはともかく。このアロマの香りが普段から彼女の身体に染み付いているのだと思うと少しばかり平静が揺らぐ。结构......いや。かなり好きな香りだ。
「さ、上がって上がって。私の部屋はこっち」
靴を揃え、笹岭さんの后ろについて。香りのもとに导かれるように歩みを进める。どんどん浓くなっていく。眠くなるような、头が冴えるような。ぼーっとするような、はっきりするような。不思议で不思议で癖になってしまいそうな香りが、そこに近づくにつれ强くなる。
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