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日文868(17)


僕―――工藤歩梦は、恋人である宫川絵梨の手を引きながら、少しでも空いている列に并ぼうと帰宅ラッシュの中を掻き分け、前进を开始した。
そんな、どこにでもいる初々しい恋人たちの姿を、目を细め、薄く微笑を浮かべながら见つめている人物がいることなど全く気づきもせずに。

***

今日これから観に行く映画の话をしているうちに时间は流れ、闻き取りづらい早口のアナウンスに続いて、电车がホームに滑り込んでくる。
先头车両の1番前の扉。
真ん中あたりの车両に比べれば、まだわずかにマシという程度の混み具合。
さして珍しい电车でもないのに、カメラを构えて梦中でシャッターを切りまくる撮り鉄たちを横目に、开いた扉から吐き出されてくる人々を通すために脇に寄る。
やがて、降りてくる人の列が途絶えると、人の流れが电车の中に吸い込まれていく。 本文来自nwxs5.cc
何とか角を确保して絵梨を导き、彼女を守るように両手を壁に当てて踏ん张る。
背中にガンガンと鞄やら何やらが当たり、足はげしげしと踏まれたり蹴られたり。
「大丈夫?」
思わず顔を颦めると、上目遣いに絵梨が心配そうに讯いてくる。
「な、なんとか……うおっ」
颔こうとした瞬间、强い冲撃とともに押し退けられ、よろめく。
その拍子に絵梨の傍から强い力で引き离されてしまった。
「歩梦!」
「だ、大丈夫!」
心配そうな絵梨の声に慌てて返事を返す。
絵梨との间に、数人の客が容赦なく流れ込んでくる。
小柄な絵梨は人并みに饮まれ、サラリーマンの肩越しに鼻から上ぐらいが见えるだけになってしまう。
ぎゅうぎゅう诘め状态の中で人を掻き分けて絵梨の元に辿り着くのは难しそうだった。
まるで天の川によって引き裂かれた彦星と织姫かのような。

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(とか、さすがにバカップル过ぎるな……)
一瞬抱きかけた妄想を、苦笑と共に振り払う。
(ま、まぁ、絵梨は角にいるし、大丈夫だろ……)
こちら侧の扉は、5つ先の駅までは开かない。
そして、その駅は二人が降りる駅だった。
(まぁ、后で、ジュースでも奢るか……)
一绪に帰ろうと待っててくれていたにもかかわらず、あっさりと引き离されてしまったことに罪悪感を覚える。
偿う方法を考えつつ、少しでも体势を安定させようと吊り革を探してきょろきょろしていると、ふと、鼻先を甘い香りが过った。
肩越しに视线を向けると、后ろに立っている女性から香っているようだった。
俯いているために顔は见えないが、サラサラの黒髪ロングがとても美しい。
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